3.国による活動内容の違い
国による違いが顕著に現れたのが、ボランティアの活動内容に関する項目である。例えば、活動時間数を見ると、米国では10時間以上が92%、フィンランドでは70%、スイスでは66%であったのに対し、日本では5時間以下が57%、ガーナでは48%を占めており、同じスポーツイベントでの短期完結型ボランティアと言えども、差があることが浮かび上がった。
個人でボランティア活動に参加したのか、あるいはグループとして参加したのかという点では、フィンランドの64%、スイスの82%、米国の81%が個人で参加したのに対し、インドでは59%、日本では45%、タンザニアでは57%が、グループの一員として参加していた。
与えられた役割という点でも、国による違いがみられた(表1)。全体で見ると、アスリートや観客と直接接する立場で活動したボランティアが全体の46%を占めていたが、米国とガーナは、他の国に比べ、ボランティアが務めた役割の多様性が高かった。日本では、イベント前の準備やイベント後の清掃に従事するボランティアが多かったことに比べ、ガーナでは、広報・マーケティングや資金集めに従事した人も多く見られた。米国では、オンラインでのボランティア活動も活発に行われたことが分かった。
さらに、与えられた役割を完遂したかどうかを尋ねると、フィンランド、ガーナ、日本、スイス、米国では、回答者の95%以上が、計画通り与えられた役割を完了していた。一方、タンザニアは86%、インドは73%にとどまっていた。この点を理解するに当たり、インドのスポーツボランティアには、イベント主催者との個人的な関係によって、活動時間を延長したり、短くしたりする傾向があるとする先行研究が参考になりそうである(Chakravarti, 2018)。
4.大規模イベントでは、スムーズなボランティア活動を経験
こうした国による差異は、文化的な影響も垣間見えるものの、ボランティアが活動したイベントの規模や性質にも左右されると考えられる。今回のデータでは、米国、フィンランド、スイスに、全国規模のスポーツイベントで短期完結型のボランティア活動をした人々の回答が多く含まれていたことから、規模に注目した傾向も浮かび上がってきた。
大規模なイベントの場合、主催者がボランティアをコーディネートする経験を積み重ねてきていることが推測される。毎年開催されるマラソン大会や4年に1回開催される世界大会などを思い浮かべてみると、ボランティアの役割が明確に定められ、提供する研修の内容、ボランティアへの連絡のあり方、問い合わせへの対応方法、ボランティア同士の交流を促す方法など、経験に基づいた方法がある程度定まっている場合が多い。
確かに、大規模イベントでのボランティアが多かった米国、フィンランド、スイスの回答を見ると、ボランティアが、主催者との関係において、非常にスムーズな経験をしたことが浮かび上がってきた。例えば、「イベントに関する事務連絡(活動内容や時間)は良く整理されていた」と感じたボランティアは、米国で80.6%と高く、続いてフィンランド(60.2%)、スイス(51.5%)であった(図1)。一方、小規模なイベントでのボランティア経験者が含まれた日本やインドは、良く整理されていなかったと感じる回答が3割を占めていた。