大規模なスポーツイベントをはじめ、ボランティアへの対応が整理整頓された環境では、感謝の気持ちを示すことも、必要なこととして予め整えられている可能性が高い。「活動に対して感謝されたと感じた」という設問では、米国、フィンランド、スイスにおいて「そう思う」という回答が7割以上を占めた一方、日本、インド、ガーナでは、感謝を感じなかったボランティアが一定の割合確認された(図3)。
他者と共に活動することに満足するかどうかという点においても、大規模なスポーツイベントで活動した人の方が、「そう思う」と回答する傾向が見られた(図4)。主催者のコーディネートがスムーズに行われた結果、他のボランティアや、参加者とのやり取りに困難が生じにくかったことが推測される。一方、日本とインドにおいて、他者と共に活動することに満足したと感じたボランティアは、相対的に少なかったようである。
5.「満足」と「またやりたい」のギャップ
全体的な満足度という観点からも、大規模なスポーツイベントでのボランティアの方が高いという傾向が見られた(図5)。米国、スイス、フィンランドでの満足度が総じて高かった一方、日本やインドでは、25%以上が「あまり良くなかった」「全然良くなかった」を選択した。活動がスムーズではなかったり、混乱が生じたなど、何らかのストレスを伴う経験となったことが推測される。
直感的に考えると、満足の行くボランティア体験をした人は、再び同じようなイベントでボランティアをしたいと考えるのではないかと予測される。しかし、この調査では、必ずしもその傾向が当てはまらないという、興味深い知見が浮かび上がってきた。
類似のイベントで再びボランティアをしたいかどうかを尋ねたところ、タンザニア、米国、スイス、ガーナで「またやりたい」が多く、満足度が比較的低かった日本でも、約70%のボランティアが再び活動する意図を持ったことが明らかとなった(図6)。スポーツイベントでの満足度と、再度活動する意欲を持つかどうかには、ギャップがあることが示唆される。