3. 2003年度と2019年度の比較分析
表1は、宮城県および仙台市所管のNPO法人の2003年度と2019年度事業の収入の合計である。2003年度は、219団体で約23億円の経常収益であり、22億を支出している。2019年度は566団体でそれぞれ約146億円と143億円となっている。16年が経過する中で、セクターとして見るNPO法人は、6倍以上の成長を遂げており、社会に与えるインパクトも大きくなっていると言える。
個別の項目で見ると、会費収入の平均は、2003年度が72万円であったのに対して、2019年度は51万円であり、減少している。寄付金の平均を見ると、42万円から92万円に増えている。平均値で見ると、助成金は2倍、事業収益は3倍ほど増えている。結果、経常収益の平均値も1.1千万円から2.6千万円と2倍以上になっている。
ただし、平均値はセクターの状況を正確に反映していないとも言える。ボランティアベースの団体から5億円以上の収入のある団体もある。そこで、それぞれの年度の中央値についても表1に示している。項目別に見ると、寄付や助成金の中央値は0円である。また、会費も10万円前後である。事業収益は、16万円から226万円に伸びているものの、平均値に比べるとかなり小さい。また、収入全体で見ても、1.7百万円から5.7百万円と増加しているが、安定した人件費を支払うことのできる規模の団体は半数もいないとも捉えられる。
視点を変えてみると、どの項目もセクターとして見ると増加している。平均値や中央値が小さくなっている会費でも、全体として見ると、1.6億円から2.9億円に増加している。寄付も、9千万円から5.2億円の増加であり、NPOを支える社会的支援という視点で見ると、市民や企業からの支援は増加していると言える。助成金も2.8億円から15億円に拡大していることから、非営利セクターを支援する財団や企業または行政の財源が大きく、または多くなっていることがうかがえる。事業収益には行政委託事業も多く含まれているが、正確なデータをとることはできない。ただし、大部分を占めていると予想される。16億円から121億円の成長には、行政とNPOとの委託関係や協働の進展が影響していると考えられる。
表1 2003年度事業と2019年度事業における宮城県のNPO法人の収入内訳
出所:筆者作成
図1は、2003年度と2019年度のNPO法人セクター全体で見た項目別の経常収入比率である。セクターで見たときに金額が拡大していることについては先に述べたとおりであるが、その収入構造を見ると、変化していることがうかがえる。
最も大きく変化しているのは事業収益である。2003年度に69%であったものが83%となっている。事業収益の成長が最も大きかったことがここからわかる。かたや、その結果として、社会的支援収入と位置付けられる、会費、寄付金、助成金については、それぞれ6.7%から2.0%、3.9%から3.6%、12.1%から10.0%と、比率が低下している。特に会費の比率が大きく下がっている。また、3つの項目を合計して見ると、22.6%から15.6%に減少している。
図1 項目別の経常収益比
出所:筆者作成
なお、厳密な比較にはならないが、山内他(2007)による2003年度の全国のNPO法人の収入構造を見ると、会費が8%、寄付金が9%、助成金が11%となっている。3項目の合計は28%となり、宮城県の2003年度よりも社会的支援収入が大きい。これは首都圏をはじめとする大都市に所在する大規模な団体の影響があると言える。例えば、国連UNHCR協会や国境なき医師団日本など、世界で活動する国際的な団体は、数十億円単位の寄付や会費など、桁違いの社会的支援収入を得ている。